みみずの声と蛇の眼
春になると、溝のふちなどで鳴く虫があります。
あれは、みみずだと言われていますけど、おじいちゃんやおばあちゃんは、「あの声は、むかし、蛇からもらったものなんだよ」
と、よく、話してくれました。
むかし、蛇は、たいそう声がよくて、いい声で鳴いていました。
けれども、眼がなくて不自由していたので、なんとかして眼をほしい、とねがっていたそうです。
ところで、蛇がいい声で鳴くのを、うらやましく思い、自分もあのような声がほしいと、かねがね思っていたのが、みみずでした。
みみずには、そのころは、いい眼があったそうです。
ある日、みみずは、蛇にむかって、「お前の、そのいい声をわたしにくれないか」と、頼んでみました。
すると、蛇は、「よかろう。それなら、声をやるから、お前のその眼と取りかえてくれ」と、言いました。
そこで、たがいに、ほしいものと交換したのだそうです。
みみずは蛇の声を、蛇はみみずの眼をもらいました。
それで、いまでは、みみずは鳴くようになったけれど眼がなくなり、蛇には眼があるけれど鳴かなくなったそうです。
東北から中部地方にわたって、多く伝えられている話です。
ミミズが眼を交換する相手は、モグラや蛙などの話もあります。。
(神奈川県藤沢市円行)